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新しい機能を得るためには、既存の活性部位を変えなければいけないが、自然淘汰が活性部位の変化を許さないという問題がある。この自然淘汰の監視から逃れる手は、1つしかない。自身を重複してエキストラコピーを作ることである。

どうも、部分的盗作という概念には、堂々巡りという致死的な欠陥があるようである。さいわい、真核生物には、単細胞生物と多細胞生物の中間的な生き方をするものがある。それは粘菌の類である。

とにかく、生命誕生前に生まれた3の倍数でない単位塩基の繰り返しが、塩基置換によってある程度変性した時に、爆発的な創造力を発揮したということである。

ところで、活性部位のアミノ酸配列が変わらない限り、前代未聞の活性を持った、本当の意味の新機能蛋白質は生まれ得ない。したがって、飛躍的進化の前提は、極端に保守的な自然淘汰の監視の目から一時逃れる方法を見つけることである。そこに、前述した倍数体化や、tandem gene duplicationの意味があるわけである。なるほど、重複によって冗長なコピーは自然淘汰が無視してくれるから、突然変異を無差別に蓄積できる。この無差別蓄積の結果は2つしかない。機能喪失による死物化か、前代未聞の新機能を獲得した新遺伝子としての再生である。ただし、冗長コピーの宿命は99%死物化である。

大野乾 "生命の誕生と進化" 東京大学出版会 (1988)



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